松杉 明子 身上書

  05, 2007 01:55
JACROWでは、毎回役者が“身上書”を提出する。

自分が演じる役、その人の半生について書くのだが、その内容に正解などはない。
そこに想いを馳せるそのプロセスこそが重要だとのぶりんは言う。


今回の『落下生』でも“身上書”を書いた。

私、“松杉 明子”(アコ)についての身上書を載せてみようと思う。
結婚3年目にして離婚を宣言する。
お金持ちのお嬢さんで、明るく、リーダータイプ、少し感情的になることがある。


幕が開くときのその時間の身上書。
“2007年1月3日午後3時”
2007年の目標も書くこと。


※この身上書に登場する団体、人物等は架空であり、実在するものとは本当に一切関係ありません。


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松杉 明子(30)
旧姓 寺田 明子
1976年12月28日生まれ


母方の祖父が華僑。
母は病弱で、幼少の頃から長い入院生活を余儀なくされている。
使用人はいたが、昼間に少し来ていただけだった。

父は祖父の協力で会社を興しており(テラダトランクルーム)、
祖父に認められようと懸命に働いていた。
ちょうど私の誕生日はかきいれどきだとかで当日に父にお祝いをしてもらったことはなかった。

一人っ子だったが、父は会社と病院の行き来で忙しかった。
祖父は私をかわいがってくれていたが、私は一人でも大丈夫だということを母に見せたかった。
夜は家に一人でいることが多かった。
誕生日の夜は毎年寒くて、寂しい。その日はいつもこっそり泣いた。
冬は嫌い。


高校に入って少しだけ素行の悪い友人と遊び始めたが、
くだらないことばかりしているのですぐに飽きた。


高校2年から生徒会に入った。
今更部活には入れないし、家に居ても暇だし、というのが動機だった。
父は本当に生真面目な人で、祖父はよくもっと遊び心を持てと言っていた。
今思えば、かまってもらいたい気持ちからだったのかもしれないが、子供心に祖父の言うとおりだと思っていた。
だから、というわけではないけれど、生徒会も生徒会長まで勤めるのは気が引けた。
副生徒会長というポジションはちょうどよかった。

実家が経済的に裕福なせいもあっただろう、少しだけ冷めた目を持って生きていた。
周りにくらべて少し大人びていたかもしれない。周りが子供に見えていた。


何をやってもある程度のことはできた。
ストレートに感情を出しても、いじめられたりするようなことはなかった。
これも実家の影響だったと今では思うが、当時はちょっと天狗になっていたかもしれない。
私の言葉で傷つけられたりした人がきっとたくさんいたのではないかと思う。


大学に入って、オールナッツ※1に入る。
高校で部活に入り損ねたリベンジだ。
ほどほどに頑張って、よく遊ぶ。単純に、楽しかった。
この頃がもしかしたら一番よく笑ったかもしれない。

ゆな※2とは感情を出し合うこともあったが、それが終わると何もなかったようにケロリとしている。
そういうところが、言葉にはしなかったが、居心地がよかった。

孝也※3に会って、バランスが良い人だと感じた。やるときはやる。遊ぶときは遊ぶ。
その真剣さに惹かれた。この人に認められたいと思った。
いつのまにか目で追っていた。何かがあったとき、最初に名前を呼ばれたいと思った。

一度、キャンプに行った先で一人で夜中に散歩に出て、帰ってきたときにものすごく怒られたことがあった。
ものすごく怒られた。
責任感の強い彼は、心配してくれていたからこそ、私を怒ったのだ。
その日の夜寝る時、なぜか祖父のことを思い出した。

孝也に憧れていたコは何人かいた。ゆなはそのリーダーみたいな感じ。
私は彼のそばにいたいという気持ちを表に出さなかった。
そこまでこだわっているつもりはなかったし、一緒にされたくないと思った。

ゆなは面倒を見てあげてるだけなのか、どこまで本気なのかわからなかったが、
孝也の話をするのは避けた。きっとぶつかりあってしまう気がしたから。

孝也には大学を卒業してから大切な恋人ができたみたいだし、
私もそれなりに恋愛をしたりしていたが、それが終わるときには必ずたかやを思い出した。

恋というものに期待をしなくなったとき、子供ができた。


たかやに話を持ちかけたときも、私は彼への気持ちを出さなかった。

絶対に断られると思ったその話に彼が悩んだとき、
私は、、、彼に愛されたいと心から願った。

そして彼が受けてくれたそのとき、
彼に愛されるために、どんなことでもやろうと、そう思った。

孝也は、和也※4を自分の子供のようにかわいがってくれた。
こんな日が続けば、いつか私だけを見てくれる日がくるかもしれない。
もしその日が来なくても、私は今孝也の一番そばにいる。
幸せだったし、目標があった。
子供の頃冷めた目で、働く父親を見ていた自分を恥じた。
これからまったく新しい自分ができるような気がした。


そんな時だった。
和也が事故で死んだのは。


信じられないほどの喪失感。
まさに、目の前が真っ暗になった。
自分でもわけのわからないことを叫び、どれだけ泣いたかも覚えていない。

ある時、孝也が自分を責めていることに気付いた。
この人は、私のためにありとあらゆるものを犠牲にしてきた。
それに気付いた。

愛されるどころか、私は、嫌われる。私は言葉を発するのさえ恐くなった。
お酒を飲むようになったある夏の夜、急性アルコール中毒で病院に運ばれた。
病院に来てくれた孝也を見ながら、ぼんやりした頭の中で別れるべきだとハッキリ思った。

ずっと逃げていた事実だった。

孝也は彼女を忘れないし、もう私を愛してくれることもないだろう。
私たちを繋ぐものは、もう何もないのだ。


バーベキューでみんなが集まってくれた。
私を励ましてくれた。
今まで人に興味を持つことがなかった自分に改めて気付いた。
みんなのやさしさが私を救い、また私の決意を後押しした。


別れても、1年に一度こうやって孝也にも、みんなに会える。
私は、孝也と別れる今だからこそ、孝也のように生きたいと思った。
それが2007年の目標。



※1オールナッツ…大学のサークル名・テニスサークル
※2ゆな…くろいぬパレード島崎裕気演じる新倉由奈美・大学時代の仲間
※3孝也…Innocentsphere狩野和馬演じる松杉孝也・夫
※4和也…私の産んだ子供ちゃん・享年二歳



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だだーっと書いて、書き足りないところもたくさんあるが、
そう!大切なのはプロセスだから。

そして念を押しておきたいのは、脚本を書いたのぶりんの作った設定ではなく、書かれた台詞などから勝手に役者が想像して書いたものだということ。

なので、生徒会では副生徒会長あたりがベストポジションという実兄から発された言葉がもとになったりしている。

近づけたり、近づいたり、そうしてアコになりました、とそういうお話・・・。

4 Comments

ユリ  

反芻して…感動っ

すげ… スゲっっ!!

芝居を観ながら、各人物のバックグラウンドや流れる感情を、
薄ぼんや~りと想像しながら観劇してたわけだけど、
うん、アコはなんかこんな感じだった!!

いや、もちろんここまでクッキリハッキリ詳細に想い描いていた訳じゃないけど、
アコに見え隠れしてた孤独感とか切なさとかは…あぁぁ、そっか…そっかぁ… やっぱそういうことかぁ…
なんか、ガッテンガッテンガッテンガッテンガッテン!!て感じ(笑)
いっぱいボタン叩いちゃうぞ

身上書かぁ…それイイね。なるほど。勉強になりますた。

とりあえず今回のこの路線はおし進めるべきですよ蒻さん
黒髪がイイですよ蒻さん
なんかそれ色っぺーんですよ蒻さん

2007/02/05 (Mon) 02:45 | EDIT | REPLY |   

アニ  

う~ん

副会長がベスポジ・・・。
そんな事言ったっけ?俺。
また記憶喪失。

でも確かに生徒会は副会長がベスポジ。
昔の俺、なかなか的を射た事言うね。

2007/02/05 (Mon) 11:18 | REPLY |   

かものはし  

⇒ユリ

おおぉ!
そんなことを言ってもらえて、うれしかばい!

ガッテンいっぱいいただきました!!

身上書は、のぶりんが毎回JACROWで実行していることでね、
毎回締め切りギリギリになってしまうんだけど
毎回深夜に及んでどっぷり考え込んでしまうさー

ちょっと入り込みすぎて書いたらキモチわるいかしらと軽く不安だったから、ほんとガッテンしてもらってうれしいよー

ほんとのぶりんの言うように、それを考えてそのときの気持ちを一度しっかり考える、その過程がほんと色々役にたちます。

ちなみに黒髪はスプレーでやっていたので、またいつもの3色ヘッドに戻ってます。

色っぽさなんて、大人の落ち着きなんて、、、、っっ

2007/02/07 (Wed) 23:37 | EDIT | REPLY |   

かものはし  

⇒アニ

マジで覚えてないのー?

生徒会長は大変すぎる、副生徒会長はそんなに忙しくないのにけっこう偉いっぽいから、絶対に副生徒会長がいいって言ってなってたんだよ。
それに似たようなことで、
1位になってしまうと絶対に引きずり下ろされてしまうから、2位、3位になってそれを長い間維持するのが賢いやり方だと言ってました。

だいたい何につけても上位には食い込めるが1位にはなれない家系の負け惜しみにも見えるが、これまた的を得た発言されてらっしゃいますよねー

2007/02/07 (Wed) 23:43 | EDIT | REPLY |   

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